動画編集ソフトDavinci Resolveのシステム環境設定に関する情報まとめ

2024年1月16日

このページでは、動画編集ソフトDavinci Resolveにおけるシステム環境に関する知識や情報をまとめています。なお、私は有償版であるDavinci Resolve Studioを使っていて、それを前提にしていますのでご了承ください。

メモリ&GPU

認識できるメインメモリの最大容量

通常、Resolveのメモリー上限は、搭載メインメモリの75%まで使用可能です。また、Fusionのメモリーキャッシュ上限は、Resolveのメモリーの75%まで使用可能です。つまり、Fusionのメモリーキャッシュ上限は、搭載メインメモリの56.25%になります。この法則を元に一覧表を作成しました。

認識できるメインメモリの最大容量
搭載メインメモリ容量 Resolveのメモリー上限 Fusionのメモリーキャッシュ上限
8 GB 6 GB 4.5 GB
16 GB 12 GB 9 GB
32 GB 24 GB 18 GB
64 GB 48 GB 36 GB
128 GB 96 GB 72 GB
256 GB 192 GB 144 GB
512 GB 384 GB 288 GB
1024 GB 768 GB 576 GB
搭載メインメモリの75% Resolveのメモリーの75%
(搭載メモリの56.25%)

補足情報

搭載グラボのVRAM容量に対して必要なメインメモリ

以下は、グラフィックボードのメモリに対してどれくらいメインメモリ(DRAM)を搭載するべきかという目安の一覧表です。

グラボメモリに対して必要なメインメモリ
グラボメモリ 最低必要容量 オススメ容量
4 GB 8 GB 32 GB
6 GB 16 GB 32 GB
8 GB 16 GB 48 GB
10 GB 16 GB 48 GB
12 GB 24 GB 48 GB
16 GB 24 GB 64 GB
20 GB 32 GB 64 GB
24 GB 40 GB 80 GB
48 GB 72 GB 128 GB
64 GB 88 GB 160 GB
96 GB 136 GB 224 GB
128 GB 176 GB 288 GB
196 GB 264 GB 416 GB
256 GB 344 GB 544 GB

オススメ容量の根拠は、FusionメモリだけでVRAMを100%使用しても不足が無いように、VRAM容量から逆算したものです。(オススメ容量=VRAMの56.25%の逆数=VRAMの約1.78倍)
Davinci Resolve単体で使う分にはかなり余裕を見ているものの、その他のアプリも使うのであればもう少し積んでもいいかな?とは思います。(VRAM100 GB以上とかは未知すぎて実感はありませんが。)

メインメモリのスペックによる恩恵

メインメモリの容量と4K(H.264)書き出し時間の関係一覧
搭載メモリ チャネル数 クロック数 書き出し時間
16 GB 1ch 2666 Hz 100分
32 GB 1ch 3200 Hz 78分
32 GB 2ch 2666 Hz 56分
64 GB 2ch 3200 Hz 50分
  • メインメモリの容量が多ければ多いほど動作は安定し、書き出し速度は速くなる。特に、32 GB以上だと動作に大きな改善が見られるのでおすすめ。これは、メインメモリだけで処理が可能になることで、仮想メモリに書き込む頻度が減るため。ただし64 GB以上ではそこまで恩恵がない。(VRAM容量が48 GBとか、DRAM容量に迫ってくると話は変わると思うけど)
  • メモリクロックの高さ、チャネル数の多さに比例して高速化する
  • 例えば、2666Hzから3200Hz(+23%)にすると、書き出し時間は+28%となる。また、シングルチャネルからデュアルチャネルにすると、書き出し速度は+100%になる。

補足情報

デコードオプション

ハードウェアデコード(デコードにハードウェアアクセラレートを使用)

RTX 20/30/40シリーズや、intel第11世代以降はH.265で色んなフォーマットのデコードに対応しているので、対応しているコーデックを使用する場合に動作が軽くなります

ハードウェア別フォーマット対応一覧表(デコード)

H.264の対応一覧表(デコード)
H.264 AMD
Radeon 5000/6000/7000
シリーズ
NVIDIA
GTX 10シリーズ
NVIDIA
RTX 20/30/40
シリーズ
Intel Quick Sync
intel第10世代
Intel Quick Sync
intel第11/第12/第13/第14世代
8-bit 4:2:0
8-bit 4:2:2
8-bit 4:4:4
10-bit 4:2:0
10-bit 4:2:2
10-bit 4:4:4
H.265の対応一覧表(デコード)
H.265
(HEVC)
AMD
Radeon 5000/6000/7000
シリーズ
NVIDIA
GTX 10シリーズ
NVIDIA
RTX 20/30/40
シリーズ
Intel Quick Sync
intel第10世代
Intel Quick Sync
intel第11/第12/第13/第14世代
8-bit 4:2:0
8-bit 4:2:2
8-bit 4:4:4
10-bit 4:2:0
10-bit 4:2:2
10-bit 4:4:4
12-bit 4:2:0
12-bit 4:2:2
12-bit 4:4:4
AV1 ◯(40のみ)

4:2:2 10-bitが重い問題

最近のハイエンド動画カメラ(例えばSONY FX30とかα7S3とか)は4:2:2 10-bitの記録フォーマットに対応しているんですけど、NVIDIA RTX 40シリーズでもこのコーデックに対応していません。なので、対応した編集機材を持っていない場合、プロキシを使わないと編集がすごく重くなるし、エンコードにも時間がかかります。

いくつかの解決方法をお手軽な順に紹介します。

Intel Arc A380やA770を導入する

Intel Arc A380なら2万円前後で入手可能。出費はありますが恩恵も大きい。

  • 4:2:2 10-bit素材もプロキシ無しでそのまま使える
  • 元素材だから色味を正確に把握できる
  • Davinci Resolveの動作が根本的に軽快になる
プロキシ同時記録を使う

撮影機材が4:2:2 10-bitに対応しているということは、撮影時のプロキシ同時記録にも対応しているはずなので、これを使うのも良し。ただしビットレートが低くなるので、色味の正確性には少し欠けます。

intel第11世代以降のCPUでパソコンを構成・構築する

CPUパワーだけで解決できるので、パソコンを買い換えようとしている人には良いかもしれません。

撮影時のフォーマットをH.265 4:2:0 10-bitにする

4:2:0 10-bitに対応するグラフィックボードは多いので、これだけでも解決はできます。しかも出費がない。ただし、既に撮影した素材には有効ではないし、画質面で妥協することになります。

撮影時のフォーマットをH.264 4:2:2 10-bitにする

H.264のほうがH.265よりもCPU負荷が小さいので、苦肉の策として使えます。ただし動画保存容量が大きくなるのでストレージが圧迫されます。また、CPUに無理をさせていることに変わりはないので、根本的な解決とは言えません。

AV1のエンコード、デコード

NVIDIAではRTX 40シリーズ以降からAV1エンコードが行えるようになりました。一方IntelではIntel ArcがAV1エンコードに対応しています。下表では、Davinci ResolveでGPUを2台接続した場合の役割分担と書き出し時間を表しています。

AV1でのArc A380とNvidia RTX4090のエンコード時間(CPUはRyzen 5950X)
コーデック デコーダー エンコーダー エンコード時間
AV1 Arc Arc 31分
AV1 Arc Nvidia 19.9分
AV1 Nvidia + Arc Arc 22.5分
AV1 Nvidia + Arc Nvidia 22.3分
AV1 Nvidia Arc 28分
AV1 Nvidia Nvidia 21分
  • RTX 4090単体(AV1対応)よりも、Intel Arc(A380)を併用したほうが書き出しが速くなる
  • RTX 4090単体ではタイムライン再生が重い場合でも、Intel Arcを併用するとCPU(Ryzen 5950X)の使用率が60%→20%以下へ改善・軽量化される

これが結構盲点で、ゲーミング用みたいな高性能パソコンでも、コーデックに対応していない構成のせいで編集が重くなる場合があるので、心当たりのある方にはIntel Arcの追加がオススメです。