Davinci Resolveに最適なCPUはどれ?

2019年12月24日

ここではDavinci ResolveをフルHD 30 fps~8K 60 fpsで使いたい人向けに幅広く「CPUを買う時に頭の片隅に置いといた方がいい話」を交えて記述します。

Davinci Resolve上での私の環境設定については下記リンクで紹介してます。↓

2020年2月頃に有償版を購入しました。↓

結論

ここでは箇条書き。なぜこういう結論に至ったのかについては続きで詳細を記します。

  • FHD~4K30p以下なら、最低でも6コア12スレッドはあったほうが良い。(最近のなら、大体自然とそうなると思うけど)
  • 4K以下なら、シングルスレッド性能が高い方が有利。
  • 4K30p以上なら16コア32スレッド前後の多コアのほうが良い。
  • 8Kの映像も扱うなら、16コア32スレッドが最低ライン。
  • グラフィックボードにもよるけど、Intel製CPUのほうが相性が良い場合が多い。
  • グラフィックボードへの依存度が高いので、20万円のCPUを買うよりも、5万円のCPU+10万円の最新グラフィックボードを買った方がいい。(予算が余ってるなら別やけど)

Davinci ResolveにおけるCPUの役割

Davinci Resolveでのパーツごとの役割
PCのパーツ Davinci Resolveでの役割
CPU レンダリング、素材メディアの読み込み、最後の書き出し、タイムライン再生処理
グラフィックボード 作業時のエフェクト処理、作業時の処理全般、タイムライン再生処理
メモリ(RAM VRAMとの橋渡し(VRAMの何倍も積んでも無意味)

エフェクトによってはCPUが働く

必ずしもエフェクト処理はグラボだけが担うのではなく、CPUにも負担はありますから、あんまりしょぼいCPUでもダメ。

高性能CPUの恩恵、メリット

エンコード(デリバー)を高速化出来る

例えば下の動画では次の2つを比較していますが、エンコード速度はスコアの数値に凡そ比例しています。エンコードの方法がNativeでもグラフィックボードでも。

  • Ryzen 5 1600(6コア12スレッド, 参考スコア:12954)
  • Ryzen 7 2700X(8コア16スレッド, 参考スコア:17221)

CPUの性能が高ければ高いほど、書き出し時間を短くすることができます。でもこれらの処理は編集の最初と最後だけ。時間さえ許すのであればCPU性能にそこまでこだわる必要はありません。実際の作業時の足かせにはなりにくいからです。

でもそれはあくまでも極論。

編集作業も軽量化できる

もちろん編集時にもCPUは機能しているのでCPUが高性能なほど編集中の動作も軽くなります。
なぜなら、元の素材データを編集ソフトで開くためにCPUを使うからです。しかも素材データの圧縮率が高いほどCPUの負荷は大きくなります。

  • RAWデータ(負荷はめっちゃ軽い、ただしデータ容量がめっちゃでかい)
  • H.264(負荷は普通の重さ、データ容量は割と小さい)
  • H.265(負荷は重い、でもデータ容量は凄く小さい)

また、再生速度を上げたり、タイムラインで同時に読み込むメディアの数が多かったりするとCPUの負荷が上がります。

「Davinci ResolveはそこまでCPUにこだわらなくていい」って言う話は皆してるしBMDの中の人もそう言っているんですが、なんだかんだCPUは仕事をしています。かと言って極端にスペックの高いCPUは価格も高いので、お手頃なCPUを見極める必要があります。でもこの感覚は実際にDavinci Resolveを適度に使えるPCを使ってみないと掴みにくいと思います。

でもベンチマークが全てではない?

  • 4KやフルHD以下だと8~10スレッド程度しかコアが機能しないみたい(これはPremiere ProでもDavinci Resolveも同じっぽい)

その検証動画をいくつか紹介します。

Premiereでのプロキシ生成速度

例えば次の2つを比較した検証動画。

  • AMD Ryzen 9 3950X(16コア32スレッド)
  • Intel Core i9 9900K(8コア16スレッド)


この動画で検証しているのはAdobeのPremiere Proという動画編集ソフトでのプロキシ生成という作業。Davinci Resolveでの「最適化メディアの生成」に相当します。

CPU コア数 参考ベンチマークスコア 価格帯(目安) グラフィックボードスコア
Ryzen 9 3950X 16 36050 10万円クラス 19851
Core i9 9900X 10 22982 6万円クラス 11779

スペックだけ見ればどう考えてもRyzen 9 3950Xの時の構成のほうが圧勝のはずなんですけど、動画の通り実際に動画編集でプロキシ生成をしてみると、むしろ5%ほど遅い。

動画では「8スレッド+αしか動いていない」と言っています。16スレッドだろうが64スレッドだろうが8つしか動いてくれないとなると、シングルスレッド性能の高いほうが有利だということになります。(ただしこれはアップデートで改善される可能性もある)

でもシングルスレッド性能も3950Xのほうがベンチマークスコアは高いんですよね。ここが面白いところ。
複数のベンチマークテストで結果が分かれるのと同じように、ソフトとの相性とか向き不向きがあるのは確かで、あるベンチマークで良いスコアが出るからと言って、他のどんなソフトでもその優位性が現れるとは限りません。少なくともPremiere Proに限っていえば、AMD製よりIntel製のほうが相性が良さそうな印象を受けます。

なので、CPUのランキングサイトに載っているベンチマークスコアを絶対視するのは良くありません。M1 Mac ProだとDavinci Resolveが劇的にヌルヌルになったのも、そういう相性問題とかソフトの最適化の話なんだと思います。

4Kと8KでのCPUの振る舞い

上の話を裏付けるもう1つの検証がこちら。4K動画ではCPUで半分以上のコアが動いていなかったのが、8K動画ではフル稼働したという話。

  • 6分50秒から:4Kの検証
  • 9分30秒から:4Kノイズリダクション
  • 12分30秒から:4K高負荷ノイズリダクション
  • 19分30秒から:8Kの検証


12分頃の高負荷ノイズリダクションを掛けている時でさえ、稼働しているスレッドは24個中9~10個だけ。

4K以下なら8スレッド程度しか動かない?

これも参考になった動画の1つ。

フルHDや4K以下では8~10スレッドくらいしか機能しないという現象は、Premiere Proに限らずやっぱりDavinci Resolveでもあるみたいです。
4KでのCPUの負荷率はこんな感じ。

  • 稼働率20%: AMD Ryzen Threadripper 1950X(16コア32スレッド, 参考スコア: 27791)
  • 稼働率35%: Intel Xeon E5-2697V2(12コア24スレッド, 参考スコア: 14152)(2021年前後私が使ってるCPU
  • 稼働率100%: Intel Core i7 3770(4コア8スレッド, 参考スコア: 6379)
  • 稼働率100%: Intel Core i7 3820(4コア8スレッド, 参考スコア: 5750, Xeon以前に私が使ってたCPU

スコアに反比例して稼働率が低くなります。

こうして見比べてみると、AMDのCPUでは偏ったスレッドの使い方をしているのに対して、IntelのCPUではどのスレッドも満遍なく動く傾向が強い。(後述)
この現象は、メーカー毎のSMTの塩梅の関係もあるかもしれません。

同時マルチスレッディング

SMT (Simultaneous Multithreading) とは、単一CPUで複数の実行スレッドを同時に実行するプロセッサ機能のこと。


例えば4コア8スレッドで同じソフトを使用したとしても、Intelは100の仕事を各スレッド約10ずつ分担させるのに対して、Ryzenだとなるべく少ないコアをフル稼働させようとすることが多いように感じます。ソフト側のマルチコア対応とか負荷の大きさにもよるでしょうけど。

エンコードでは全部動く

ただし、ここで注意点。
作業時では8スレッドしか動いていないとしても、ネイティブエンコード(CPUを使うエンコード)では全てのスレッドがしっかり稼働してくれる。なので、「4K以下しか編集しないから16スレッド以下でいいや」となるのもまたちょっと違う。

並行して他のソフトも動かすことも考えると、4K30p前後だと24スレッド~32スレッドくらいあったほうが安心です。

追記:Ryzen 3990Xでのレンダリング時のCPU稼働率

Ryzen 3990XでのレンダリングでCPUがどれくらい動くのかテストした動画。この動画は下の方で紹介する3970Xの話でもまた載せています。(28分00秒から)

グラフィックボードによるエンコードでは128スレッド全てのコアが動いているものの、100%では稼働していません。ちなみに上の検証動画で使っている[MXF OP1A, DNxHR444 12-bit]というのは一般人からしたらちょっと特殊な書き出しなんですが、私のパソコンでも同じ設定で書き出してみたところ、CPUもグラフィックボードも100%まで張り付きました。それくらいスペック差があるということ。

私のCPU

Intel Core i7 3820 (2013年-2020年)

過去に私が使っていたCore i7 3820(参考スコア: 5750)だと、フルHDのクリップを切り貼りする程度なら特に問題なく作業できます。4コア8スレッドですけど、8つとも全て均一に稼働しています。

ただ、FHDの1倍速でもエフェクトによってはかなり頑張っていることがあって、70%前後の稼働でもカクつくことがありました。この状況時、グラボの稼働は20-30%だったのでCPUが足を引っ張っている印象。

シングルスレッドのスコアを調べてみると、3820のスコアは1740。一方、2022年頃主流のCPUだと3500-4000ほど。2倍以上の性能差があります。

Intel Xeon E5-2697 v2 (2020年- )

2020年3月を境にしてCore i7 3820から乗り換えたのがIntel Xeon E5-2697 v2(12コア24スレッド、参考スコア: 14152)。マザーボードは以前のまま。コア数は3倍、マルチスコアは約2.5倍になりました。

Ryzenとは違い、XeonでもCore i7と同じように均一に稼働しています。レンダーキャッシュはいくらか速く作られるようになった感じ。4K映像の撮って出しの書き出しの場合、レンダーキャッシュが無くても25 fps前後は出ますし、レンダーキャッシュを事前に用意しておけば80 fps前後で書き出せます。

ちなみに、Xeon E5-2697 v2で4K30p 10bitとそのプロキシを再生した時の負荷がこちら↓↓

再生速度と負荷(メディア1つ+調整クリップ)
再生速度 4K30p 10bit H.264 プロキシ(FHD30p 8bit H.264)
1倍 30-40% 9%
2倍 50% 10%
4倍 100% 15%
8倍 17%
16倍 19%
32倍 22%
64倍 17%

プロキシでは32倍より64倍のほうが負荷が軽くなっていました。再生速度は30pで安定していて画面上でもヌルヌルに動いていますが、64倍にするとグラフィックボード(GTX 1660 Super)の負荷が85%ほどになるので、そっちがボトルネックになって認識できないレベルでコマ落ちしているのかもしれません。

乗り換えた話や備忘録はこちら↓

必要最低限のCPUとは

これは現時点での私の環境から見た体感ですけど、4KではなくフルHDだとしても、Core i7 3820のベンチマークスコアの1.5~2倍くらいは欲しい。

以下の4つのCPUの比較については下記動画を見てください。

  • ThreadRipper 2950X
  • Ryzen 7 2700X
  • i9 9900K
  • i7 8700K

Davinci ResolveとPremiere Proの比較もあります。この動画を見ると、Davinci Resolveの場合、AMD RyzenはフルHD程度なら有利に見えるが、4K映像ではIntelのほうが有利に見えます。

また、書き出しの速さはコア数の多いRyzenのほうがいいスコアを出していますが、編集時の軽さはIntelのほうが有利な印象を覚えます。以前見かけたブラックマジックデザインの岡野さんの話では「CPUに関してはIntelでもAMDでも大差はない(大意)」と仰っていたのですが、この動画を見る限りではトータルではIntelが若干有利にも思えます。

上記の「岡野さんの話」ってのはこちら↓

無償版と無料版の能力比較

もう1つ気を付けたい点は、「Davinci Resolveの無償版と無料版ではレンダリング速度が違うらしい」ということ。

下の動画では、以下の2つで同等のレンダリング速度が出ていると言っています。グラフィックボードのスコアは46%も違うのに。

  • 無償版+2080Ti(ハイスペック)

  • 有償版+1070(46%ロースペック)

無償版と有償版
グラフィックボード グラボの価格 Davinci Resolveのバージョン ソフト価格 合計コスト
RTX 2080Ti(参考スコア:16694) 約15万円 無償版 0円 約15万円
GTX 1070(参考スコア:11378) 約8万5000円 有償版 約3万7000円 約12円2000円

「Davinci Resolveは有償版でしか2枚以上のグラフィックボードを認識しないよ?この検証は2枚刺しなのでは?」と思ったのですが、1枚刺しでの検証とのこと。

もしこれが本当なら、めっちゃ高いグラボを買うよりも、300ドルでDavinci Resolveを有償版にして、安めのグラフィックボードを購入し、浮いた予算で良いCPUを購入するほうがよっぽど経済的だと思います。そうすれば有償版の機能も使えるようになります。

しかも最近だと、もっと安価でGTX 1070の性能を超えるグラフィックボードを入手可能ですからね。ちなみに私も有償版を購入しました。詳細は下記リンクにて。↓↓↓

グラフィックボードとの兼ね合いも大事

グラフィックボードのVRAMが4 GB以下で重いと感じているなら、優先順位としてはまずグラフィックボードの買い換えを検討すべきです。Davinci Resolveでは最低でも6 GB、出来れば8 GBVRAMが必要だと考えています。詳細は下記リンクを見てください。


以上を踏まえた上で、オススメしたいのは以下の通り。

8K映像でオススメしたいCPU

別ページにまとめています。

4K60P以下でオススメしたいCPU

別ページにまとめています。

FHD60P以下でオススメしたいCPU

別ページにまとめています。

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参考資料