動画撮影に適したSONY Eマウント中望遠ズームレンズおすすめ3選(フルサイズ)
中望遠や望遠の定義は人によって少し違うかもしれませんが、ここでは焦点距離でいうと35-200mm前後で「動画撮影にも使えるオススメの中望遠域ズームレンズ」を紹介します。
- 標準域から中望遠域をカバーする「中望遠ズームレンズ」(例えば35-150mm)
- 中望遠をカバーする「中望遠ズームレンズ」(例えば70-200mm)
もくじ
SONY SEL70200GM2(FE 70-200mm F2.8 GM OSS II)
- 新モデル(発売日: 2021年11月)←こっち
- 旧モデル(発売日: 2016年9月)
- https://www.sony.jp/ichigan/products/SEL70200GM2/
メーカー公式ページ。発売日: 2021年11月。
- 文句なしの解像度
- レンズ内手ブレ補正有り
- インナーズームなのでジンバル・スタビライザーとの相性も良い
- 白レンズかっこいい
ここまでは新旧ともに同じで、GMレンズは皆の憧れですが、動画を主体とする私にとって旧モデルはそこまで魅力を感じなかった。でも今回は違う。
SEL70200GMとSEL70200GM2の違い
旧モデルと新モデルでは何がどれくらい違うのかをまとめました。
本体重量を約29%軽量化
レンズ内部に堅牢性の高い「マグネシウム合金製部品」を採用し、本体重量を1480 gから1045 gへ435 gも軽量化。
また、レンズ前方部のレンズ配置を減らすことで重心を本体側へ引き寄せて、先重り(フロントヘビー)を軽減し、体感的な重さも軽減。
AFの高速化
- 旧モデルと比べてAF速度を最大で約4倍高速化
- ズーム中のフォーカス追随性能が30%アップ
スイッチ類の進化
- フォーカスリング、ズームリングに加え、絞りリングを追加。
- アイリスロックスイッチ(絞りリングをロックするスイッチ)を追加。
動画撮影に最適化
- フォーカスブリージング、フォーカスシフト、ズーム操作に伴う地崩れを従来よりも抑制。
- XDリニアモーターや新開発の絞りユニットを採用し、動画中の操作音や振動を抑制。
次項ではフォーカスブリージングについて少し掘り下げます。
フォーカスブリージングを排除
SELP28135Gのような完全な動画向きのレンズは珍しくて、ほとんどのレンズは盛大なフォーカスブリージングがありました。動画を撮る人にとっては純正レンズを忌避する理由の1つになっていたと思います。
一方、SigmaやTamronはフォーカスブリージングを排除したレンズを近年次々と出していて、人気が出ているのは単に解像度の高さや価格面だけではないと感じます。
そこへ純正がこのリニューアル。アツイですね。
- α7Ⅳでは本体側でのフォーカスブリージング補正機能に対応
未対応機種の本体ではレンズ側の性能に頼る必要がありますし、補正機能対応機種であっても使用モードによっては制限が掛かる場合がありますし、まだまだレンズ側の性能に頼ることはあると思います。
(※下の動画はフォーカスブリージング補正機能の紹介であって、SEL70200GM2のフォーカスブリージングを示す動画ではありません。)
私はα7SⅢを使っているのでこっちでもアップデートで導入して欲しいんですけど、まだその様子は無いみたい。α1ですら未対応。(2021年12月確認時点)
どういった理由で導入されていないのか分かりませんが、本体のスペック的には劣っているワケではないので今後に期待。
旧モデルのフォーカスブリージング
旧モデルでもフォーカスブリージングは比較的小さいですが、それでもトータルでは目立つという印象。せっかくのGMレンズでも、これでは納得がいかない。
- 狭いフォーカス移動ではフォーカスブリージングが目立つ
(10分11秒から)
(5分40秒から)
- 逆に、大きなフォーカス移動では旧モデルでも意外とフォーカスブリージングが目立たない
(6分50秒から)
新モデルのフォーカスブリージング
新モデルではこれくらい改善されました。(0分15秒から)↓
単焦点レンズ並みの解像度
この事実に1番びっくりしました。(25分11秒から)
上の動画に登場するスコアがこちらです。単焦点並みっていうか、単焦点以上といっても差し支えない気がします。ズームレンズでありながら、「解像感がヤバイ」と有名なあのSEL50F12GMよりスコアが良いって凄くない!?(解像度高い順です)↓
単焦点/ズーム | レンズ | 解像度 |
---|---|---|
単焦点 | SEL135F18GM | 5115 |
単焦点 | SEL35F14GM | 4879 |
ズーム | SEL70200GM2 | 4841 |
単焦点 | SEL50F12GM | 4838 |
単焦点 | SEL85F14GM | 4771 |
単焦点 | SEL20F18G | 4676 |
単焦点 | SEL100F28GM | 4671 |
ズーム | SEL1224GM | 4644 |
単焦点 | SEL90M28G | 4604 |
ズーム | SEL70200GM(旧モデル) | 4533 |
単焦点 | SEL50F25G | 4454 |
単焦点 | SEL24F14GM | 4453 |
1位のSEL135F18GMも確かに解像度が凄いレンズで前から欲しかったんですが、こうやってスコア別で見るとやっぱり納得。そしてSEL70200GM2というズームレンズがその解像度に迫ろうとしているというのは本当に驚きです。
大体のことをSEL70200GM2で撮って、いざという時(暗所でのポートレイト等)に周辺部までシャープなSEL135F18GMを使えば、中望遠域は怖いもの知らずになりますね。
タムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)
- https://www.tamron.jp/product/lenses/a056.html
メーカー公式ページ。発売日: 2020年5月。
印象
- 70-180mmは70-200mmに比べるとズーム範囲が狭いけど、実際の絵面を見てみるとそこまでは気にならない。
- ズーム範囲の狭さと引き換えにサイズも小さいし、本体重量が軽いのは魅力的。(それでも810 gはあるけど)
- ボケはなめらかで綺麗。玉ボケは内部に輪線ボケもうっすら見られることもあるけど、ほとんど目立たないし自然。
- フォーカスブリージングが極めて少なくて、動画撮影にも適している。
- 広角端でマニュアルフォーカスなら最短撮影距離が0.27mなので、ハーフマクロみたいに寄って撮れるのは撮影の幅が凄く広がる(SEL70200Gではこれが出来ない、しかもF4だし)
- ただしボディ内手ブレ補正に頼ることになるので、動画撮影では操作に少し気を遣う。(特に望遠端ではちょっとの揺れでも目立つので)
- 価格面でも、上記の性能でこの実勢価格を考えると、かなりお手頃だと感じる
- スイッチ類は無いけど、本体側で操作することに慣れている人はほとんど気にならないのでは?
- 最大の弱点は手ブレ補正が無いことくらいではないか。
SEL70200GM(Gen2ではない)と比較した場合の差についてはこちらの動画が参考になるかと思います。
(5分10秒から)↓↓↓
- フォーカスブリージングの少なさ
- 玉ボケの違い
- 低速シャッタースピード時における手ブレ補正の有無と滲みの差
- 解像度の差の少なさ
玉ボケの様子
こちらの動画がわかりやすいかと思います。(6分35秒から)
どのF値でも玉ボケの内部はかなり綺麗です。拡大して見ると輪線ボケが見られる場合もありますけど、拡大しないとそこまで目立たないのでまだ許容範囲内。
それよりも少し気になるのは玉ボケの輪郭の強さ。夜景の玉ボケならまだいいですが、木漏れ日とかテカりのある葉の反射の玉ボケは少しうるさいと感じる場合があるかもしれませんね。
対抗として35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)を敢えて紹介しない理由
2021年10月末、Tamronから35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)という凄いレンズが出ました。推したい気持ちもあるんですが、敢えてやめました。35-150mmの不満点を下記に記します。
- ちょっと重い
-
対抗モデルと比較してみましょう。
- 35-150mm (Model A058):1165 g
- SEL70200GM2: 1045 g
- SEL70200G: 840 g
- Tamron 70-180mm (Model A056): 810 g
重量は1165 g。他の対抗レンズと比べても極端に重いワケではない。でも、「手ブレ補正非搭載なのにこの重さはちょっとなぁ・・・800 g以下ならまだ納得がいく」という印象は否めない。
- 手ブレ補正機能非搭載
上の話の続き。200mm無いとはいえ、望遠端側150mmで動画を撮るならやっぱり手ブレ補正はあったほうがいいと思う。
- ぐるぐるボケが少し気になる
ボケも玉ボケ内部も綺麗で使い勝手は良さそうに感じるけど、ぐるぐるボケが目立つことがある。縦構図でのポートレイトでは少し使いにくい印象。
- 印象とコスパが折り合わない
メーカー希望小売価格は229900円。実勢価格でも10万円台後半。
- F2.0スタートは有り難いが、動画撮影には不向き
そもそもの話、このレンズ自体があまり動画向きに作られていないように感じる。開放F2.0スタートは確かに有り難いものの、動画撮影となるとISOの変動を押さえるためにF2.8に手動設定することになり、F2.0の恩恵は得られなくなる。これがF2.8通しで200 g軽くなって手ブレ補正も付いて価格もぐっと下がるというなら、そっちのほうがよっぽど有り難い。(動画撮影メインの意見)
上記の不満点から、総合的に見て35-150mm (Model A058)は写真向きのカメラなんだと割り切るようにしました。レンズ内手ブレ補正非搭載の同じタムロンでも、70-180mm (Model A056)のほうがまだ動画撮影に適していると思いました。
SONY SEL70200G(FE 70-200mm F4 G OSS)
長所
- レンズ内手ブレ補正を搭載
発売日が2014年3月ではあるものの、レンズ内手ブレ補正の精度が高くて現在でも十分通用する。特に、手ブレにシビアな望遠端でも動画撮影をおこないやすい。
- インナーズーム方式で重心が安定
レンズ内手ブレ補正に加えてインナーズーム方式であることで、ジンバル・スタビライザーとの相性と安定性は抜群。
- スイッチ類が豊富
ビルドクオリティも高いし、所有感が得られる。てか単純に白レンズかっこいい。古くてもさすが純正レンズと思わせてくれる。
- 高画質
絞り開放でも周辺減光が少ないし、色収差も少なくて、総合的に画質は良い。
- フォーカスブリージングがほぼ皆無
発売日が2014年3月のモデルにも関わらず、フォーカスブリージングがほぼ皆無なので動画でも違和感の無い動画撮影でのピント送りが可能。
- ボケがなめらかで綺麗
ボケはクセが無く自然。玉ボケ内部も均質で綺麗で、輪郭の溶け方も自然。(悪く言えば面白みが無いとも言えるかもしれないけど)
収差が少ないので変なにじみも無く、逆光でも扱いやすい。
短所
- F4通し
発売当時ならF4通しにも需要はあったと思うけど、最近はサードパーティ製でも低価格なF2.8通しのレンズが多く出てきているので有り難みが減った。
ただしレンズ内手ブレ補正が搭載されているので、動画撮影のような低速シャッタースピードでは「F2.8&手ブレ補正未搭載のレンズ」よりも高画質になりうる。単にF値が低ければ良いというワケでも無い。
- F8まで絞らないと解像しない
F4開放では少し解像度が落ちるので暗い室内では少し使いにくい。一方、上位モデルのSEL70200GM2は広角端でもF4-F5.6で最も解像し、更に望遠端だと開放F2.8で最も解像するので、この差は大きい。
- 最短撮影距離が1 m、最大撮影倍率が0.13倍
寄って撮れない。小さいものを大きく撮るのが苦手。
古いモデルながら、フォーカスブリージングが小さい
SEL70200G(発売日: 2014年3月)の動画撮影時のフォーカスブリージングの様子。かなり少ないことが分かります。
(4分21秒から↓↓↓)
場面によってはGMレンズに匹敵する
建物や風景の写真ではそう思わせてくれるポテンシャルを持っているのは確かです。
総評:屋外での使用が前提ならコスパが高くてオススメできるが・・・
総合的な印象としては、F8くらいまで絞らないと解像しない、最短撮影距離が遠い、F4通しという制約を考えるとオールマイティーに使えるレンズではないので、誰にでもオススメできるレンズではありません。
ですが、屋外での風景撮影、建物撮影、動物撮影、人物撮影など、明るい場所で遠くのものを絞って撮るのがメインの「被写界深度の浅い写真は好かん!」という人にとっては今でもコスパの良いレンズの1つと言えそう。
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