動画編集ソフトDavinci Resolve用おすすめグラフィックボード3選(厳選)

2022年2月13日

Windowsユーザー向けに、Davinci Resolve用おすすめグラフィックボードを紹介します。

前提条件

NVIDIA製かIntel製であること

このページではほぼNVIDIA製品を紹介していますが、その理由は別ページでまとめています。↓↓↓

有償版を使うこと

有料ソフトを買えというのは抵抗がありますが、「無償版のDavinci Resolve+高級グラボ」よりも、「有償版Davinci Resolve Studio+安いグラボ」のほうが圧倒的にコスパが良いので、グラボではなく有償版Davinci Resolveに予算を回してください。

購入時の注意点とかは別のページにまとめましたので、よかったら参考にしてください。

1位: Intel Arc A380(FHD~8K画質 & コスパ重視)

デスクトップ PC 向けインテル® Arc™ A シリーズ・グラフィックス

メーカー公式ページ。

ここで紹介するスタンス
  • 既にグラボを持ってるけど更に改善したい
  • とにかく今は節約したい
  • Davinci Resolveの快適性のみにフォーカス

まさかいきなりIntel Arcがオススメだなんて意外ではありませんか?しかもA380って。私も以前まではIntel Arcに懐疑的でしたが、Davinci Resolveに限っていえばIntel Arcはめちゃくちゃコスパが良くて、しかも既にRTX 4090みたいなハイエンドグラボを使っている人にとっても有益なグラフィックボードになり得ます。

デコード・エンコードに強い

Intel ArcはAV1やH.265 4:2:2 10-bitをサポートしています。これがの最大の強み。NVIDIA製グラボでも40シリーズの時点ではH.265 4:2:2 10-bitに対応していません。

Intel Core iシリーズ第10世代以前、或いはAMD製CPUはデコードにおいて多くのコーデックに非対応ですが、Intel Arcがあればそのデコードを担い、CPUの負荷率を大幅に低減してくれるのでDavinci Resolveの動作が軽快になります。つまり、しょぼいCPUでも既に高性能でも劇的に快適になる可能性があります。

Ryzen CPUのハイエンドPCに有益

下の動画は、Ryzen 5950XにRTX 4090のハイスペックPCにおいて、Intel Arc A380でCPU負荷と書き出し速度が劇的に改善したことを報告する動画です。

この要因は、Ryzen5000シリーズがH.265 4:2:2 10-bitのデコードに対応していないためです。一応Ryzen5000シリーズや7000シリーズはH.265 10-bitに対応しているというアナウンスはありますが、具体的なフォーマットは不明です。推察するに、Ryzen5000シリーズや7000シリーズは4:2:0 10bitには対応しているものの4:2:2 10bitには対応していないのではないかと思われます。

なので、ハイエンドのRyzen CPU構成でIntel Arcを使うと、4:2:2 10bit映像においてめっちゃ軽くなる場合があります

冒頭でも触れた話をもう一度します。RTX 20シリーズ以降のモデルでは既に多くのフォーマットに対応していますが、RTX 40シリーズでさえH.265 4:2:2 10bitには対応していません

グラボ2枚刺しに注意点!予算があるならIntel Arc A770

有償版Davinci Resolve Studioの場合は2枚以上のグラフィックボードも認識してくれるので、既存のハイエンドグラボとIntel Arcの2枚刺しといった構成が可能です。

一方、無償版のDavinci Resolveはグラボを1枚しか認識できません。Intel Arc A380はVRAMが6GBで少し頼りないので、もし無償版Davinci Resolveを使うならIntel Arc A770(16GB)の1枚刺しがオススメです。

2位: NVIDIA Geforce RTX 4070 Ti SUPER(8K画質 & 将来性重視)

ここで紹介するスタンス
  • Davinci Resolveだけでなく、ゲーム、生成AI、VRchat等トータルでの使用感も重視
  • 安さ重視ではなく、満足感とコスパを重視
GeForce RTX 4070Ti SUPER

メーカー公式ページ。

RTX 3090より優秀

RTX 4090, 4080,4070 Ti SUPER , 3090の比較一覧
項目 4090 4080 4070 Ti SUPER 3090
プロセスルール 4nm 4nm 4nm 8nm
ブーストクロック(GHz 2.52 2.51 2.61 1.70
CUDAコア 16384 9728 8448 10496
メモリ 24 GB GDDR6X 16 GB GDDR6X 16 GB GDDR6X 24 GB GDDR6X
RTコア 128基 Gen3 76基 Gen3 66基 Gen3 82基 Gen2
Tensorコア 512基 Gen4 304基 Gen4 264基 Gen4 328基 Gen3
L2キャッシュ(MB) 72 64 64 6
DLSS 3 3 3 2
NVEnc 第 8 世代 x2 第 8 世代 x2 第 8 世代 x1 第 7 世代 x1
NVDec 第 5 世代 第 5 世代 第 5 世代 第 5 世代
AV1エンコード 新対応 新対応 新対応 -(非対応)
AV1デコード 対応 対応 対応 対応
消費電力 450 320 285 350
電源要件 850 750 700 750

色んな部分が新世代に対応

  • RTコア(レイトレーシング)が第 3 世代へ
  • Tensorコアが第 4 世代へ
  • NVEncが第 8 世代へ
  • AV1エンコードに初めて対応

RTX 3090と比べて、色んな部分で技術革新しています。これは単に「ちょっと性能がよくなる」だけではなく、将来、新しいソフトウェアや新技術が登場した際に、その恩恵を受けられる対応機種かどうかが変わってくる場合があるので、買うなら30シリーズより40シリーズのほうが賢明です。

FF15ベンチマークでもRTX 3090 Ti超え

RTX 4070Ti SUPERはRTX 4080と肉薄する性能を持っているので、ここではRTX 4080 vs RTX 3090 Tiの話を引用します。

  • (RTX 4080は)1080p、4KのスコアはRTX 3090 Tiと比べて約20%向上
  • (RTX 4080は)その他ベンチマークでもRTX 3090 Tiと比べて25~30%向上

ベンチマークの限りでは、RTX 4070Ti SUPERのRTX 3090Tiより劣っている部分はメモリ容量くらいと言っても差し支えのないレベルです。

エンコード処理時間は4090並に優秀

  • NVエンコーダーは第 8 世代へ(RTX 30シリーズはすべて第 7 世代)
  • 動画エンコード速度が3090Tiよりも20%高速
  • 最上位モデルのRTX 4090と比較してもほぼ遜色がない

Davinci Resolveのエンコード速度で比較すると、RTX 3090Tiより10~20%速くなったが、RTX 4090とでは大差がない。つまりこれは、エンコーダーの数ではなく新世代のエンコーダーによる恩恵と考えられます。また、Ada Lovelace世代で新しく対応したAV1エンコードはHEVCより高画質に書き出せて、処理速度も20%速い。

ただしこの結果は、10分程度の簡単な編集の動画を書き出した場合です。これは恐らくですが、極端に重い動画・容量の大きい動画の場合、エンコード(デリバー)だけに限っていえばVRAMの恩恵を受けるRTX 3090 Tiのほうが速いかもしれません。

RTX 4080だとエンコーダーが2基搭載されていますが、RTX 4070 Ti SUPERは1基のみ搭載されています。2基搭載における体感レベルの恩恵についてはかなり不明点が多いですが、1つのタスクについてエンコーダーが並列処理をすることは考えにくいので、少なくともDavinci Resolve単体ではそこまで恩恵はないと感じています。

PC Watchによると、2023年初めにエンコーダーの同時セッション数が3から5に強化されている(更に、2024年には5から8へ強化|マイナビ)ので、複数同時セッションの高負荷環境で恩恵があるのかな?という感じ。例えばTwitch, youtubeなどへの複数同時配信・複数録画時に遅延やコマ落ち等のトラブルなく、軽快でスムーズに動作するなど。

ちなみに、エンコーダーを2基搭載しているのは40シリーズ以降であり、且つRTX 4070 Ti以上の機種のみです。ただしRTX 4070 Ti SUPERは1基。

VRAMは16 GBで十分

RTX 4070 Ti SUPERは多くのモデルが15万円前後なのに対して、RTX 3090 Tiは30万円~40万円でRTX 4090と大差がなく、2023年以降にわざわざ3090などを買うメリットはあまり感じられません。

RTX 4070 Ti SUPERはRTX 3090Tiよりも優秀で、しかもDavinci Resolveのみに関して言えばRTX 4090並みに優秀。欠点といえばVRAMが16 GBである点くらい。

でも、Davinci ResolveではVRAMが16 GBもあれば、テロップ挿入、4Kの複数の動画の組み合わせなど、大体のことはストレスなく処理できます。

充実した環境を目指すなら、VRAMは最低でも16 GBは欲しい。けど16 GBあれば十分とも言えるんです。何だか矛盾しているように聞こえるかもしれませんけど、価格とかも考えると16 GBが丁度良いんです。

VRAMの容量とDavinci Resolveの操作感
容量 Davinci Resolve
24 GB以上 大抵のことはストレスなし
16 GB 4Kの重い編集、8K60pはギリギリ
12 GB 4Kの少し重い編集でもストレスなし/8K30pはギリギリ
8 GB 4Kの軽い編集ならストレスなし/8Kは無理
6 GB 4K動画ではスムーズさがなく少しストレス
2 GB 4K動画ではすぐ落ちる/1080pでもストレス

巷では「4080は4090の引き立て役に過ぎず、中途半端」という低評価をよく見かけますが、これはあくまでもゲームがメインの話です。RTX 4070 Ti superが登場するまで、RTX 4080はDavinci Resolve用としてはコスパ最強だと私は考えていました。ですが、今やRTX 4070 Ti superのほうがコスパが良い。

また、更に安さを重視するのであればRTX 3060 (12GB)がおすすめです。↓↓↓

3位: Geforce RTX 3060 (12GB)(4K & 安さ重視)

ここで紹介するスタンス
  • Davinci Resolveでの使用感のみにフォーカス
  • 安さと動作の安定性を重視したチョイス
GeForce RTX 3060 ファミリ

メーカー公式ページ。

RTX 3060 (12GB)は4万円~、4060Ti (16GB)は7万円~

結論から言うと、4060Ti (16GB)を7万円で買うくらいなら、【Intel Arc A770】、もしくは【RTX 3060 (12GB)+Intel Arc A380】を買った方がいい。もちろん2枚刺しの場合はDavinci Resolve Studioが前提です。

RTX 4060/4060Ti(8GB)は2023年5月頃からの登場。RTX 4060 Ti (16GB)は2023年夏以降に登場。基本的にスペックは8GB版と同じで、メモリ容量だけが16GBに増えたバージョンと考えていいです。(GEFORCE RTX 4060 ファミリ(公式ページ)

スペックだけで言えばRTX 3060(12GB)よりもRTX 4060 Ti (16GB)のほうがいい。でも2倍近い価格差を考えるとそうもいきません。

「じゃあスペック的にRTX 3060(12GB)はどう劣っていてどういう我慢が必要か」、優劣の目立つ部分を下にまとめます。

RTX 3060(12GB)と4060Ti (16GB)の比較一覧
項目 RTX 3060(12GB) RTX 4060Ti (16GB)
プロセスルール 8nm 4nm
CUDAコア 3584 4352
ブーストクロック(GHz 1.78 2.54
メモリ 12 GB GDDR6 16 GB GDDR6X
メモリバス 192bit 128bit
RTコア 第 2 世代 第 3 世代
Tensorコア 第 3 世代 第 4 世代
DLSS 2 3
NVEnc 第 7 世代 x1 第 8 世代 x1
NVDec 第 5 世代 第 5 世代
AV1エンコード -(非対応) 新対応
AV1デコード 対応 対応
CUDA機能 8.6 8.9
消費電力 170 165
電源要件 550 550

RTX 3060(12GB)は色んな面においてRTX 4060 Ti (16GB)より劣っているので、タイムラインプロキシの解像度を一段下げるなどの工夫が必要な場面は増えるかもしれません。でも、VRAMが12 GBもあることは、Davinci Resolveの動作安定性に十分貢献しています。

例えば、RTX 3060(12GB)のCUDAコア数は約3600ですが、じゃあCUDAコア数が4倍も5倍もあるRTX 4090の書き出し速度が4倍も5倍も書き出しが速いかという、全然そんなことはありません。また逆に、色んなスペックが優れているモデルでもVRAMが8 GBしかなければ、高負荷時の動作は不安定になります。(カクつき、遅延、コマ落ち等)

VR・ゲーム・生成AIもしたいというなら、レイトレーシング関連で優れているRTX 4060 Ti (16GB)のほうが断然優勢だとは思いますが、Davinci Resolveの編集のみでいえば4万円vs7万円の価格差からみて圧倒的にRTX 3060(12GB)のほうが圧倒的にコストパフォーマンスは優れていると言えます。