業務用全自動製氷機を買う前に知っておきたい予備知識、方式による味や溶けやすさの違い

2018年5月19日

私は実際に業務用の製氷機を店舗に導入した経験があるので、それを踏まえてお話します。

飲食店や生鮮食品店などを開業しようとすると初めて業務用製氷機を買うことになります。 でも製品ごとの違いや製氷方式の違いが分からないので、どれを買えばいいのか分からなくなります。

このページでは私の経験も踏まえて不明点が解消できるように記述します。

どの業務用製氷機を購入するかを決定するためには、次の4つを把握している必要があります。

  • 製氷方式の違い
  • 氷のサイズや形の種類
  • 設置場所
  • 製氷能力と貯氷量(寸法は能力に比例する)

よく見られる製氷機のメーカー

よく見かけるのは次に掲げるメーカーです。一般人の目線だとパナソニック以外はあまり馴染みのないメーカーですが、この分野ではどれも有名です。

ホシザキ電機(Hoshizaki)

全自動製氷機を中心に厨房機器を製造するメーカーで、2008年に東証1部(銘柄コード:6465)、名証1部(銘柄コード:6465) に株式上場した。

パナソニック(Panasonic)

説明不要の、旧「松下電器」。

フクシマ(Fukushima, 福島工業)

大阪市西淀川区に本社を置き、業務用冷蔵庫、製氷機、ショーケースなどを製造するメーカー。東証1部に株式上場している企業。(銘柄コード:6420)

JCM(日本金銭機械, ジェーシーエム)

大阪府大阪市平野区に本社を置き、ATM、券売機、精算機、自動販売機、キオスク端末機なども手がける東証1部上場企業。(銘柄コード:6418)

ナカトミ(NAKATOMI)

長野県上高井郡に本社を置く企業。製氷機、冷暖房器具、大型扇風機、コンプレッサーなどを製造している。

製氷方式の違い

業務用製氷機を購入するのであれば、セル方式とオーガ方式の二つの方式の違いを理解した上で購入した方が良いです。なぜならこの2つでは氷の味が違うからです。

オーガ方式

オーガ方式

オーガ内に供給した水を冷却して表面にできた氷を回転刃で削り取り、削った氷を圧縮して整形する。製氷速度が速くコストパフォーマンスが高い。セル方式に比べてコストを65%に抑えることができる。飲食用よりも生鮮食品等の保冷に適している。

透明感がなく、踏み潰せるくらい強度が低い。

スーパーマーケットの野菜売り場、魚売り場、レジ通過後に「ご自由にご利用ください」と置いてある氷はこの方式。

セル方式

セル方式

上下を逆さにした製氷容器に下から水を噴霧し続けて徐々に氷を作り、整形できた時点で容器を温めて容器から氷を外す方式。ほぼ100%の不純物を取り除くことができる

オーガ方式と比べて、市販の氷のような純度の高い氷を作ることができるので、セル方式は純氷に近い・美味しい・溶けにくい氷を作ることができる。なので飲食用に適している。

左:冷蔵庫の製氷皿で作った浄水の氷、真ん中と右:浄水器を通してセル方式で作った氷

セル方式で作られたかどうかは氷の表面を見れば分かる。氷の表面に一箇所だけ小さなくぼみがある氷はセル方式で作られている。 氷の透明度が高く、硬い。

グラスに入れたセル方式で作った氷

浄水器を通した水で且つセル方式でも、設置する水道配管のコンディションによっては氷に水道水のニオイを感じやすくなります。

例えば、テナントとして借りた物件が長年放置されていて、蛇口をひねると赤錆や黒い水が出るような場合は注意が必要です。こだわりたい人は、事前に上水道管のサビ取りや洗浄をしておいたほうがいいです。浄水器の寿命も伸びるので一石二鳥です。

美味しい氷が出来るメカニズムについては、以前「るどうぃるの酒」で紹介した「自宅で美味しい純氷を作る方法・原理」を参照してください。

水商売、飲食店なら絶対にセル方式を使うべき理由

水商売、居酒屋、飲食店などで飲料用に使う氷は絶対にセル方式のほうがいいです。

  • 単純に美味しい氷が作れるから
  • 透明度が高いので見栄えもいいし、高級感を与えることができる

透明度が高いということは、氷と飲み物の境界が見えにくい、つまり氷の量を肉眼で把握しにくい。グラスに沢山の氷を入れても「氷でかさ増ししてる・・・」と感じにくいんです。しかも氷が綺麗なので、むしろ満足感を得られます。
ちょっと下衆な話かもしれませんが、飲料で利益率を高めたいなら氷を沢山使ってボリューミーに提供したいですよね?そういう場面において、透明度の高い氷は非常に有利です。

下のリンクでは、【店舗の形態別、オススメの業務用全自動製氷機】を紹介しています。よかったら併せてお読み下さい↓↓↓

氷のサイズや形の種類

以下の説明では、ホシザキで紹介されている名称を例に紹介します。

オーガ方式

チップアイス

粒状の氷を押し固めた小さな氷。ドリンクに使ったり、演出を兼ねた料理のアイスベッドなどに使う。汎用性が高い。

フレークアイス

チップアイスの元となる、かき氷のような小さな粒状の氷。小さな隙間にも入り込み、表面積も多いので、鮮度保持のための急速冷却に役立つ。

セル方式

キューブアイス(80 mm角)

一辺が約80 mmの大きな立方体の氷。角を落としてオンザロックのためのランプ・オブ・アイスに成形したり、かち割り氷にしたり、好きなサイズに加工できるので汎用性が高い。ただし小さなキューブアイスとは違い、ドリンク類に対してそのまま使用することが難しいので、ひと手間かかる。

キューブアイス

約30 mm角の四角い氷。30 mmという大きさは自宅の製氷機で作った氷と比べるとやや小さいようにも思えるが、飲食店等ではドリンク類でよく使われているサイズ。

ドリンク類のためにこれより大きいサイズの氷を用意しようとすると、次に説明する約50 mm×60 mmほどのビッグアイス と呼ばれる大きさの氷となるが、これでは大きすぎる。またビッグアイスは、通常はかち割り氷などに使うためそのままのサイズで使用することは少ない。

ビッグアイス

約50 mm×60 mmで、手の平に乗る大きさの氷。かち割り氷として使うことが多い。そのままでは少し大きすぎるので、使用する前には割ったり削ったり、何かしらの加工が必要になる。

異形アイスメーカー

セル方式のなかでも、ただのキューブ型ではなくて可愛らしい形に作るタイプもあります。

ホールインアイス

直径約45 mmのゴルフボール大の球体の氷。高級感を演出することができる。ただ、メーカーにもよるが本体代が高いことが多かったり、本体サイズが奥行き450 mm×幅400 mm程度のような小型なものがない。(ホシザキだと幅630×奥行525×高さ850mm:2022年時点)

ハートフルアイス

ハート型の氷。

スターライトアイス

星型の氷。氷の容量に対して表面積が大きくなるので、少しだけ溶けやすくなる。

クレセントアイス

クレセントアイスはアメリカでよく使用される三日月型の氷。どちらかと言えばセル方式に近いと言えるが、やや異なる。2

ブロックアイス

約50 mm×90 mm×200 mmのレンガ大の板氷。アイスベッドとして食材の下に敷いたり、砕いて様々な用途にも使える。

下のリンクでは、【店舗の形態別、オススメの業務用全自動製氷機】を紹介しています。よかったら併せてお読み下さい↓↓↓

設置場所

卓上

カウンターや調理台の上などに置いて使用する、高さ630 mm程度の背の低いタイプ。

アンダーカウンター(台下)

高さがおよそ800 mm程度に抑えられている背の低いタイプ。各メーカーの製品を調べたところ、800 mmが最も多く、低くて770 mm、高くて850 mmの製品がある。

店舗のカウンターの下などに設置することができて、ステンレス製の天板を調理スペースとして有効活用することができる。(コンクリート土間から店舗のカウンターの下端までの高さは900 mm前後であることが多い。)

通常、厨房の土間は排水のために勾配がついている。製氷機をそのまま設置すると傾いたりぐらついたりするので、製氷機の足に付いているアジャスターで調整する。なので高さは最低でも2~3センチのクリアランスを見ておいた方がいい

バーチカル

製氷機と貯蔵庫が一体になったタイプ。 スタックオンタイプのように分離はできない。

スタックオン

形状はバーチカルタイプと同じだが、製氷する部分と貯氷する部分の2つを上下で分割できるタイプ。

より多くの貯氷が必要になった場合に、2つの間にスリーブと呼ばれる枠を挟んで増設すれば最大貯氷量を増やすことができる。スリーブ自体はただの嵩上げの枠で、機能があるわけではない。

スライドドア

取り出し口が引き違いドアのもの。扉の開閉にスペースが必要ないので、店舗のカウンター内部など狭い箇所に設置するのに向いている。

製氷能力と貯氷量

どのサイズを購入するか決めるには、客1人当たり・或いは1日当たりにどれくらいの氷を使うのかを知る必要があります。また、余力を見てその計算した量に対して1.5~2倍程度多く見積もったり、1サイズ大きい製氷機を購入した方が無難です。飲食店舗を運営していて、「氷を切らしてしまいました、すいません、ハハハ」はシャレになりません。

製氷能力

1日で作ることができる氷の量を表したもの。一般的に単位はkgで表示される。

自然落下貯氷量が10の場合、製氷能力はおおよそ2倍の20前後であることが多く、運転開始から12時間程度で満杯になる計算となる。

自然落下貯氷量

空の貯氷庫に製氷と貯氷を続けて、氷が落下口を塞いで製氷が停止するまでの貯氷量。

最大ストック量

自然落下による貯氷では氷が山の形に貯まっていくので、貯氷庫が満杯に成る前に氷が落下口を塞いでしまい、製氷が自動的に停止する。最大ストック量はこの氷の山を平らに均して、より多くの氷が貯まるようにした時に最大量を指す。

タイプにもよるが、自然落下貯氷量10に対して、最大ストック量は11~13程度になる。

業務用製氷機の年間電気代、年間水道代

「ホシザキのIM-25M-1」で仮定すると、メーカーの公称では年間電気代は28382円、水道代は5009円なので、合計で33391円となります。

24時間365日フル稼働したとしても49531円です。その根拠を下に示します。

年間電気代

1日に18 kg作った場合、メーカーは年間電気代が28382円だとしています。

もし仮に24時間フル稼働で氷を作り続けるとしたら、消費電力180 Wから割り出せる電気代は最大で年間4万2600円ほどになります。
(0.18kW×24時間*365日*単価27円=4万2574円)
ただし実際には貯氷庫がいっぱいになった時点で製氷は止まるので、使い方次第でこれよりは確実に安くなります。

多くの場合、メーカー公式には年間消費電力量(kWh)、年間電気代が載っていません。消費電力量(kWh)も載っておらず、消費電力(W)だけ載っていることが多いです。
これは使い方によって製氷量が異なり、稼働時間にかなりの差が出るためかもしれません。

年間水道代

電気代と同様「ホシザキのIM-25M-1」の場合、1日に18 kgの氷を作る時の水道代は5009円です。

24時間フル稼働でも7000円以下です。(5009円/18kg*25kg=6957円)

下のリンクでは、【店舗の形態別、オススメの業務用全自動製氷機】を紹介しています。よかったら併せてお読み下さい↓↓↓

参考