エスプレッソマシンを買う時に知っておくべきこと
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このページではエスプレッソマシンの歴史から美味しいエスプレッソの淹れ方、タイプ別のオススメの製品などを紹介します。
もくじ
エスプレッソマシンの起源と歴史
最初期のエスプレッソマシンは、イタリアのトリノでアンジェロ・モリオンド(Angelo Moriondo)によって設計・特許取得され、1884年に開催されたトリノの博覧会で実演されました。(1884年5月16日、特許番号:Vol.33 No.256、イタリア王国の工業所有権に関する告示「Bollettino delle privative industriali del Regno d’Italia」第2版、第15巻、635〜655頁)
1901年にはルイジ・ベゼラ(Luigi Bezzera)によって改良されたデザインが登場しました。
1905年創業のLa Pavoni社の創業者であるデジデリオ・パヴォーニ(Desiderio Pavoni)はこれを買収し、1902年6月10日に特許出願、1903年4月28日に特許取得しました。(特許番号:US726793 A)
そして最初期のモデルをIdeale(イタリア語で理想、鑑などを意味する)と命名して事業を展開しました。1906年のミラノ万国博覧会にも出品されました。1
有名なエスプレッソマシンの製造メーカー
- 1902年創業、イタリアのDe’Longhi
- 1905年創業、イタリアのPavoni
- 1905年創業、イタリアのArduino
- 1912年創業、イタリアのCimbali
- 1919年創業、イタリアのBialetti
- 1927年創業、イタリアのMarzocco
- 1936年創業、イタリアのnuova simonelli
- 1945年創業、イタリアのFaema
- 1947年創業、イタリアのGaggia
- 1947年創業、イタリアのElektra
- 1962年創業、スペインのAscaso
- 1981年創業、イタリアのSaeco
- 2004年創業、アメリカのSynesso
ドリップ式コーヒーメーカーとの違い
抽出方法
ドリッパーに注いだお湯が重力で落ちてくる力だけで抽出するドリップコーヒーに対して、エスプレッソはお湯に圧力を加えて短時間に少量だけ濃縮されたコーヒーを抽出する。
- ブリューレシオ(Brew ratio)
希釈比率のこと。20 gの豆に対して20 g分抽出した場合、ブリューレシオは1:1となる。40 g抽出すれば1:2となる。レシオが低いほど濃厚なエスプレッソとなる。
- 気圧
9気圧が理想とされている。
- 湯温
ブリューレシオや豆の粒度にもよるが、深煎り豆で91℃(200°F)~浅煎り豆95℃(203°F)ほどが理想。
- 抽出時間
20秒から25秒以内の抽出が理想とされている。これ以上時間をかけるとエグ味や渋味など余計な成分まで抽出されやすくなる。
- 抽出量
ソロの場合は7 gから10 gのコーヒー豆から約1 oz(約25 mlから30 ml)の抽出を目安とする。ドッピオなら単純に2倍で14 gから20 gで約2 oz(50 mlから60 ml)を抽出する。
カフェインの量
1杯のドリップコーヒーとエスプレッソとでは、エスプレッソの方がカフェイン量は少ない。ただし、同じ容量ならエスプレッソの方が濃縮されているのでカフェイン量は多い。
部位、部品名称
- フィルターバスケット(Filter Basket)
極細挽きにしたコーヒー豆を詰める金属の小皿。ポルタフィルターに取り付けて使用する。
多くの製品ではソロ用のシングルフィルター(Single Filter Basket)と、ドッピオ用のダブルフィルター(Double Filter Basket)がある。一般的な用量はソロで7 g、ドッピオで14 gとされている。
家庭用エスプレッソマシンに付属しているバスケットは底が二重構造になっている場合がある。バスケットの内側の底面に沢山の穴が開いているのに、裏面は真ん中に1つだけ穴があるタイプがこれにあたる。これは疑似クレマといってクレマのような泡を生成するための機構とされていて、本格的にこだわりたいのであれば、下記に記すボトムレス・ポルタフィルターと合わせて、別売りのバスケットを用意した方が良い。
- ポルタフィルター(Portafilter)
フィルターバスケットをセットするための大きな取っ手のついた部品。フィルターホルダー(Filter Holder)とも言う。スターバックス社内での呼称はラポートフィルター。
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- スパウト(spout)
抽出されたエスプレッソが通る細い抽出口のこと。一般的にスパウトは2つの経路に分かれていて、ドッピオのバスケットを用いることで2つのカップにソロを同時に抽出できるものが多い。
- ネイキッド・ポルタフィルター(Naked Portafilter)
- ボトムレス・ポルタフィルター(Bottomless Portafilter)
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スパウトを設けていないポルタフィルターのこと。上質なラテアートを描きたいならこの部分の改造も視野に入れるべき(後述)
ボトムレス・ポルタフィルターによる抽出では沢山のクレマが作れる
- グループヘッド(Grouphead)
エスプレッソマシンのお湯が出てくる部分で、ポルタフィルターをセットする部分。
製品によっては、ポルタフィルターを正しい角度や向きでセットせずに誤った角度で取り付けると取り外しが困難な場合があり、タンピングも台無しとなるので注意が必要。
- タンパー(Tamper)
フィルターバスケットに詰めたコーヒー豆を均したり押し固めるための道具。素材は木製やステンレス製やアルミニウム製などがあり、柄の部分だけが木製や本革張りのものもある。エスプレッソマシーンに付属しているものもあるが、基本的にはプラスチック製。
一度タンピングした際のバスケットの端の粉を均したり、余分な粉を弾き飛ばしたりする目的でポルタフィルターをタンパーで「コンコン」と叩くことがある。これはよく見られる光景だが、タンパーとポルタフィルターの素材の組み合わせによってはそれぞれが傷ついたり凹んだりすることがあるので注意が必要。
ボトムレス・ポルタフィルターを使うべき
もしエスプレッソを極めたいなら、ボトムレス・ポルタフィルターを使うべきです。二重構造のバスケットを使用している場合は、これも交換する必要があります。(バスケットだけなら1000円以下で売ってる)
- メリット
抽出されたエスプレッソはスパウトを通らないためクレマが潰れにくく、通常のポルタフィルターと比較してクレマの量は50%以上増加する1。このため、ラテアートを描くのに適している。
エスプレッソは表層のクレマ(Crema)、中間層のボディ(Body)、最下層のハート(Heart)の3層になることが理想とされているが、このうち上の2層のクレマとボディの質が大幅に改善される。これは味、香り、舌触りの改善に直結する。
抽出される瞬間を目視することができるので、均一に出てこない場合はタンピングに問題があるなど、美味しいエスプレッソが作れない時のトラブルシューティングに繋がる。
- デメリット
二股のスパウトで分岐できないので、2杯のソロを同時に淹れられなくなる。
そのほかにも、外部に飛び散りやすい、酸化しやすい、温度が下がりやすいなどが挙げられる。しかしこれらは、カップを温めたり、カップをグループヘッドに近づけるなどしてある程度改善が可能で、明らかにメリットの方が大きい。
- デロンギのエスプレッソマシンでボトムレスポルタフィルターを使った抽出
De’Longhi EC200N-W Espresso Bottomless
DIY Delonghi Dedica EC680 bottomless portafilter – Delonghi Basket
ボトムレス・ポルタフィルターの入手方法
もしボトムレス・ポルタフィルターを使うのであれば、その入手経路を事前に確認しなければいけません。
- 新品の加工品を買う
新品の加工品を販売しているところから購入する。取り扱っていない製品もよくあるので、自分が購入を予定しているエスプレッソマシンのボトムレス・ポルタフィルターが入手可能か、事前に確認が必要。
- 加工してくれるところに依頼する
手持ちのポルタフィルターを発送すれば加工してくれるところがあるので、そこに依頼する。8000円前後で加工してくれるところが多い。
製品の型番によっては依頼を拒否されることもあるので、こちらも事前に確認しておくほうが無難。- DIYで作る
サンダーや旋盤機などの電動工具を使い、自作で加工している人もいる。電動工具を持っている人は少ないので、やや難易度が高い。
スチームド、フォームドミルクの上手な作り方とコツ
- 序盤はチッチッチッと鳴るようにノズルの先端を少しミルクの表面に出して空気を入れる
- 最初は荒い高い音が出る
- 空気を沢山含むことでミルクの量が増えてきたらノズルを深めに入れる
- ミルクジャグを持っていない方の手で底を触ることで温度を確認する
- ミルクジャグが触れなくなるくらいの熱さになったらスチームを止める
- この温度が丁度60℃付近で、ミルクの甘みが最も強くなる温度
- 慣れてくると、底を手で触らなくても撹拌時の音で頃合いが分かるようになる
- 急に軽い細かい低い音に変化する場所があるのでそれを聞き分ける(下の動画を参照)
- スチームが完了したら、ジャグを回したり底をテーブルに打ち付けるなどして衝撃を与えて余分な大きな泡を潰し、全体を馴染ませる
- 温度計で計りながらスチーミングしている動画で、60℃付近で音が低くなっている
- 5分18秒あたりで急にスチームの音が低くなり、5分24秒あたりでも更に一段階音が低くなる
エスプレッソマシン DeLonghi ECM300J-E
- 1分3秒あたりで急にスチームの音が低くなる
ミルクフォームは音で作る
エスプレッソマシンの種類
直火式
コンロなど火元の上に抽出器を置き、サイフォンの原理を用いて加熱時の水蒸気圧力で上部のコーヒー豆の詰められたフィルターへとお湯を加圧して送ることで抽出する。
マキネッタ、勅題式、直火式などの呼称がある。
蒸気式
Steam Espresso Machines、或いはSteam coffee machineなどと呼ばれるタイプ。
ボイラーで沸かしたお湯の蒸気圧で加圧する。
電動ポンプ式のように可動部分が存在しないため、低コストで製造できるので5000円前後の低価格のものが多く入門向けと言える。しかし、5気圧前後とポンプ式ほど強い圧力が与えられない製品が多い。(本来は9気圧前後が理想)
電動ポンプ式
現在もっとも一般普及している方式。多くのエスプレッソ・バーや専門店が導入しているタイプ。ボタン操作によって抽出する。
家庭用で1万円前後から10万円以上するものまで幅広く、業務用で数十万円から100万円を超える製品もある。
電動ポンプ式は主に次の3つに分類できる。
- 半自動式
ポルタフィルターに豆を詰めたりタンピングしたり、グループヘッドにセットするところまでは手動でおこない、抽出だけは電動ポンプのチカラでおこなうタイプ。抽出量は自分で決める。抽出以外はほぼ手動なので、英語ではマニュアル・エスプレッソマシンと表現したりもする。
- 自動式
豆をタンピングしてセットするところまでは手動でおこない、予め設定しておいた湯量や湯温で電動ポンプのチカラで抽出するタイプ。決められた湯量が出ると自動的に止まる。
- 全自動式
ミル、レベリング、タンピング、湯量の設定、抽出などあらゆることを自動化したタイプ。手動でおこなうのはホールビーンや水を本体にセットしたり、ボタンを押す程度だけとなる。ミルクのタンク(ミルクコンテナ)をセットすることでカプチーノを作れるタイプもある。
湯温や湯量の調節がダイヤル調整等で簡単に出来る製品が多く、手軽にエスプレッソが飲める反面、趣味性はやや薄れる。
エアポンプ式
他のタイプに比べて新しい方式。NASAなどにも技術提供しているアメリカの発明家Alan Adlerによって発明された。
電動ポンプ式とは違い、エアコンプレッサーによって圧縮された空気でお湯を強制的に押し出す方式で、圧縮空気の供給方法は内蔵の手動ポンプ、窒素や二酸化炭素のカートリッジによるものがある。電源が不要のため、アウトドアに携行することも可能。
HANDPRESSO Pump FR
レバーピストン式
エスプレッソマシンメーカーのGaggiaの創設者であるAchille Gaggiaによって1938年にイタリアで特許が提出された方式。(Brevetto Industriale N.365726, steam-free coffee machine)
(英語版wikipediaでは)
ポンプを使わず、レバーを上げ下げすることでお湯をポルタフィルターに注いだり加圧して抽出する。微調整が可能で、最も趣味性が高い。価格も高い。4連で200万円を超えるものもある。
一般的には電気ボイラーでお湯を供給するが、最も簡素なものはボイラー機能や電源を持たず、別に用意したお湯を上から注ぎ入れる。業務用の大型機種の場合は浄水器を経由した水道直結となる。
レバーピストン式には、マニュアルピストン式とスプリングピストン式の2種類がある。
- マニュアルピストン式
レバーを上げるとお湯が出て、レバーを下げる時に腕力で加圧する。
- スプリングピストン式
レバーを下げた時にお湯が同時に出て、バネの力によってレバーが上に戻る時に抽出が開始される。手を離せばレバーが上がるものや、少し持ち上げれば自然と上へと戻るタイプがある。
メンテナンス、手入れ方法
家庭用の数万円のモデルなら、水タンクを手洗いする、グループヘッドの周辺を清潔に保つなどだけで良い。グループヘッドのカバーがドライバー等で外せる場合は、定期的に分解して清掃する。
ポルタフィルターやバスケットはコーヒーの油分が馴染んだ方がエスプレッソの味が良くなると言われているのでお湯で洗い流す程度に留めておき、洗剤を使って洗わないほうが良いとされている。
- バック・フラッシュ
高級機で3ウェイバルブを搭載したエスプレッソマシンを清掃する方法。
必要な道具はブラインドフィルター(掃除専用のフィルター、お湯の出る穴が無い)と洗浄剤(Joe Gloやcafizaなど)。
(スルファミン酸は酸性の洗浄剤だけどアルカリ剤でpHを調整している。これらの洗浄剤がただのクエン酸だと推察している人もいるみたいだけど、酸性だと内部で金属が腐食する可能性が高いからかな。)
洗浄剤の成分は、アルカリ剤、リン酸ナトリウム、スルファミン酸、脂肪族アルコールポリエトキシラート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど。- バック・フラッシュ非推奨の機種
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ピストンレバー式はグループヘッドに排水と圧力を逃がすためのドレインが備わっていないため、内部に高圧が掛かってポルタフィルターが外せなくなるのでおこなわない。
また、下記リストのように、機種によっては構造上バックフラッシュをするとボイラー内に洗剤が入り込むので洗剤を使ったバックフラッシュが推奨されないものもある。もし使用した場合、ボイラー内の洗浄も必要となるので、機種に応じて確認が必要。
- ランチリオ シルビア
- イソマック ビーナス
- ビビエンメ ドモバー
- エレクトラ ニボラ、ミニバーティカル
エスプレッソマシンを買う時に気になる重要なポイント
- スチームノズルは左右どちらか、使い勝手が自宅キッチンとマッチしているか
ごく標準的なシステムキッチンの場合、左側にコンロ、右側に作業スペース、その右側にシンク、更にその右側に小スペースがあります。シンクの右端にこの本体を置くことができる場合は排水の手間が大幅に省けます。これは毎日使う上で結構重要なポイントです。
- 消費電力は高いか(高出力を維持できるか)
消費電力が高いということは、概ね、出力が高いので安定した抽出が出来ることを意味します。
- 抽出時に理想とされる9気圧が出せるか
理想とされる9気圧が出せるのか確認してください。抽出の時点で9気圧を実現するためには、ポンプ自体の圧力は15気圧ほど必要なはずです。大抵の製品ではこれを実現していますが、表記がみつからない場合は念のため確認してください。
- グループヘッドやポルタフィルターからカップの底まで、十分な高さがあるか
廉価な製品ほどコンパクトに作られていて、この高さが十分に取られていないことがあります。デミタスカップなら余裕で入るでしょうが、背の高い大きなカプチーノ用のカップをセットしようとしたら入らない・・・ということもありますので注意してください。
- 自動電源オフ機能は付いているか
オートオフ機能付きという謳い文句は家庭用の電動エスプレッソマシンでよく見られます。
私はエスプレッソマシンを購入する前まではこの機能を謳っていることについて特段の意義や効果を感じることができなかったのですが、実際に使ってみて実感しました。電源のうっかり消し忘れは尋常じゃないくらいに多いです。抽出やスチームで稼働している時以外は電源が入ってても静かなので、ほぼ毎日使ってて、本当にほぼ毎日忘れてしまうのです。(私は特にうっかりさんなので・・・)なので、もし自分がうっかりさんだという自覚がある人には自動オフ機能付きが断然おすすめです。
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